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梅雨の日に想う(前)
梅雨明けが間近に迫ったある日、三日ぶりに晴れた空を見て、私は校門をくぐった。
朝練の陸上部がぬかるんだグラウンドを走っていく。
初めはクラブに入っていない私が、こんな早朝に登校することに首をかしげる人がいるかもしれないと思ったが、四月のあの日から毎日のようにそれを繰り返していることを不審がるものはいなかった。
下駄箱から上ばきを取り出し履き替える。校内は静まり返っていた。
体育系の部活は屋外や体育館でおこなわれている。文化系のクラブは朝練をやっていないだろうから、私はほぼ人の目を避けられる。早朝から来ている先生にかち合わないように、自分の教室とは違う三階の美術準備室に向かった。
あたりを警戒してそっと扉を開ける。油絵の具だろう。鼻をつく匂いがする。イーゼルにのったカンバスにどこかで見たことのある女性の絵がある。まだ描きかけのこの絵は誰かに似ていた。先週からあるこの絵はこの学校の誰かだろうと、気になって仕方なかったが、今はやることがあった。
片隅にあるロッカーを開ける。中には何もない。
そこにカバンから取り出したお弁当をそっと置いた。私の朝の仕事はこれで終わり。ロッカーを優しく閉めて想う。あの人のことを。
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