除夜の鐘を聞きながら想う

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年の瀬を迎えて大晦日に鍋を囲むことが決まりの我が家では、今年の鍋について家族会議が開かれていた。 「カニ鍋がいい」 「却下 」 お母さんが即座に私の言い分を退けた。 「我が家にはそんなお金はありません」 「じゃあ、たら鍋。白子入りで」 それを聞いてお母さんがお父さんに何やら耳打ちしている。 「審議。白子抜きなら許可」 「受験勉強頑張ってるだから、それぐらいいいじゃない」 そんな事があっての大晦日の晩御飯は鍋の中に赤いハサミがグツグツと煮詰められていた。 「カニじゃない」 「お父さんがいいじゃないかって言うからねえ。大学行くのにこれからお金かかるんだからって私は言ったんだけどね。お父さんに感謝しなさいよ」 驚く私にお母さんが不満げに漏らした。 「お父さん、ありがとう」 そう言って鍋に箸を伸ばす。 お父さんは何も言わなかったが、同じように箸を伸ばしてカニを堪能しているようだった。 除夜の鐘が鳴る頃、年越しそばを前にして十条先生がどんな年越しを過ごしてるのか気になった。 近くのお寺から聞こえてくる除夜の鐘は煩悩を払うと言われているが、先生への想いは払われることは無いだろう。 そう思った。
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