梅雨の日に想う(後)

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梅雨の日に想う(後)

弁当箱をきっちりと置いた後、カップの自動販売機でコーヒーを飲みながら壁に寄りかかっていた。開けっ放しになっていた窓から心地よい風が吹いてくる。 「ふふふ」 自然と笑みがこぼれてくる。雲の裂け目から光が差していて梅雨も終わりだなって感じていた。 図書室で少し時間を潰そう。早起きしたんだから、ちょっとだけウトウトしたい。春眠暁を覚えずだっけ、昔の人もこんな気持ちだったのだろうか。 3時間目に国語の授業がある。先生と目があったらどうしよう。そんなことばかり考えてしまう。勉強もちゃんとしないと国語のテストで先生に失望されてしまう。そうなったらもう立ち上がれないだろう。 放課後になって昇降口から出たところで朝子と待ち合わせていた。朝子は掃除当番で少しだけ遅くなる。この後どこかに寄ろうと約束していた。 ここからだと二階の職員室前の窓が見える。先生が顔を出してくれないかとありえない期待をしてしまう。 「え」 何気なく窓を見ていた私は息を飲んだ。窓から先生が首を出してどこかを眺めていた。こっちを向いてと祈らずにはいられなかった。でも、先生はどこか遠くを見ていた。 「はあ」 思わずため息が出た。 その時、先生がこっちを見ていた。先生がいつものように申し訳なさそうに頭を下げた。教室ではないこの場所なら、人気はほとんどない。じっと先生を見つめた。先生も私のことを見つめてくれている気がした。
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