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風習というほど大げさではないが、私の育った田舎には『夕暮れ時に神社で遊んでいると神隠しに遭う』という言い伝えがある。
夕暮れ時、神社は神様の世界と繋がりやすくなっている。だから人が入ってはいけない。もし神様の世界に人が立ち入ったなら、気がふれてしまう。だから日が暮れたらお家に帰らないといけないよ。
もちろん祭事のときは別だ。
よくある躾のための方便なのだろうが、そういうのは意外と効くものである。
「だって、神隠しなんて起こったことないんでしょう?」
私が言うと、叔父は酔いで赤らんだ顔で
「爺さんが子どもの頃はよくあったらしいが、俺が知ってるのは一回だけだ」
と言った。
どういうことか訊くと、叔父は酒をあおってから話し始めた。
「神隠しじゃないかって騒がれただけで、実際は、神隠しでも何でもなかったんだけどな」
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