第3章 ヨウヘイの恋

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 白いシャツブラウスに紺のスキニーパンツの夏美さんは、藤で編んだカゴ型のバッグと白い日傘を持っていた。 「こんにちは。ええと、君はこの前会った子ね?」 「はい! 加賀美(かがみ)陽平です!」  流石、元球児。ヨウヘイは、爽やかに白い歯を見せた。 「……加賀美? もしかして、美容院の息子さん?」 「はい! 前にうちに来ていただいたと聞いてます!」 「そうだったの。陽平君はお母さんに似て、ハキハキしてるのね」 「ありがとうございます!」  ヨウヘイの張り切り振りは、夏美さんに会えたからだ。  隣に立つ友人の目の輝きを見て、少しばかり羨ましさを覚えた。 「2人とも、ここには……合格祈願?」 「ええ、まぁ」 「はい!」  一瞬、ヨウヘイを見遣った。頬がやや赤いのは、日焼けした肌が隠してくれているが、至近距離の僕の目は騙せない。 「夏美さんは、何かお参りですか?」  ちょっとした友情から、話題をそらしてやろうとしたつもりだったのだが、 「おい、立ち入ったこと聞くなよ」 「……ってぇ」  大人振ったヨウヘイに、肘鉄を食らわされる羽目になった。  夏美さんは、そんな僕らのやり取りを眺め、クスクス笑った。 「私は――ちょっと気分転換。ここは、町が見渡せるから、お買い物のついでに寄ってみたの」  朱色の鳥居の向こうに広がる景色を指差した。  確かにこの神社は、町を見下ろすように、高台に鎮座している。  神社の裏手は、高台の住宅街に続いていて、枝道が分かりにくいものの、そこからやって来れば苦労はない。しかし、正面の鳥居をくぐって参拝しようとすれば、50段を越える石段が待ち構えているのだ。 「えー、石段ツラくなかったですか?」  そういえば、この石段は野球部の練習メニューだったっけ。 「大丈夫。裏から来たの」  夏美さんはふんわり表情を崩し、 「そろそろ夕方の特売の時間だから、行くわね」  と、手にした日傘をパンッと開いた。 「あ、はい」 「……あ、あのっ!」  数歩、鳥居に向かっていた夏美さんは、ヨウヘイを振り返る。 「あの……オレも、夏美さん、って呼んでいいですか?!」  まるで告白でもするみたいに、ヨウヘイは真っ赤に――今度は恐らく夏美さんにもバレたであろう――頬を染め、はっきりと気持ちを全身に乗せて、尋ねた。
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