第7章 幼なじみの秘密

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 声がした方を見ると、クリーム色のボーダーTシャツの吉田が手を挙げている。 「やだ。違う服着てくるんだった」  言われてみれば、僕は黄色のボーダーTシャツ姿だ。  田舎のバカップルじゃあるまいし、ペアルックなんて冗談じゃない。  ましてや、コイツとなんて。 「……仕方ないだろ。で、何の用だよ」 「ちょっと待って。何か食べる?」 「いや……夕飯前だから」 「奢るわよ」 「じゃ、コーラ。Lな」 「了解」  吉田は、癖毛をフワッとまとめたポニーテールを揺らしてレジに向かった。  夏休み中のファストフード店は、10代の溜まり場だ。カウンターからテーブル席まで、安さと涼に惹き付けられて、軽快な音楽が掻き消されるほどの賑わいだ。 「お待たせ」 「おう。悪いな」  戻ってきた吉田から、Lサイズの紙コップを受け取る。  吉田は向かいのイスに、ちょこんと座り、自分のMサイズのドリンクに口をつけた。 「あのね……嘉山。今日、加賀美クンに会った?」 「――は?」  話が見えない。だが吉田は思い詰めた表情をした。 「嘉山……誰にも言わないって、約束してくれる?」 「だから、何の話だよ」 「約束して」 「……分かった」 「約束、して!」 「約束するよ」  迫力に圧され、内容も分からないのに、勢いで『約束』してしまった。  口約束でも安心したのか、吉田は乗り出していた身をイスに沈めた。 「私……好きなの」  思いがけない告白に、大きくむせた。 「バカ! 嘉山のことじゃないわよ!」  吉田は慌てて否定する。  今の勘違いは、僕のせいじゃないぞ。 「――まさか、ヨウヘイ?」  気の強い吉田がパッと頬を染めた。その女っぽい様子にビックリした。 「え……ええっ?!」 「私、1年の時から同じクラスだったの。爽やかで格好いいなあって……それで、野球部のマネージャーになったの」  マジかよ。  僕は言葉にせずに吉田をジッと見ていた。  思い返すと、高1になってからだ――僕を『嘉山』と呼ぶようになったのは。 「お昼過ぎに由美からメールが来たの。商店街の花屋さんで、加賀美クンが薔薇の花束を買ってたって」
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