第9章 噂という|徒花《あだばな》

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「私、先に行くから、ちょっと時間置いて来てよ、嘉山」  僕をチラリと見上げ、偉そうに指示を出す。強がっているが、眼鏡の奥の瞳からは不安の色が覗いた。 「……はいはい」  余計なことを言わずに、彼女の後ろ姿を見送る。  シャンプーの残り香を漂わせ、吉田が駆けて行った。  時計を見ながら、僕は遅刻にならないように、急いで教室に戻った。  その日、ヨウヘイは登校して来なかった。
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