第2章 目的の始まり

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「――マモル、まだ寝てるの?!」  いきなりドアを開けて、母さんが現れた。 「……休みなんだから、いいだろ。それより、急に開けないでよ」 「生意気言うんじゃないの。母さん、昼から出掛けてくるから、あんた留守番頼んだわよ」  一方的に、僕が出かけない前提で話が進む。 「ご飯は?」  あくびをしながら、ベッドから上半身だけ起こす。 「冷蔵庫に夕べの残りがあるから、適当に食べなさい」  部屋にズカズカ入ってきた母さんは、勝手にカーテンを開けた。  ……もう寝かさないつもりだ。 「どこ行くのさ?」 「ほら、公園の向こうの老人ホーム、婦人会のボランティアよ」 「ふぅん」 「あんたも休みだからってゴロゴロしてないで、勉強しなさいよ」 「……分かってるよ」 「じゃ、母さん時間になったら行くから、頼んだわよ」 「はいはい」  僕から眠気を吹き飛ばし、現れた時と同じように、母さんはパタパタ出て行った。  壁掛け時計は、間もなく12時だ。  朝方まで起きていたことを知っているのか知らずか、母さんにしては、寝かせてくれたほうだ。  こんな時間まで僕が家にいるのは、高校の創立記念日だからだ。  休みなのは嬉しいが、どうせなら週末とくっついて連休になればいいのに――今日は木曜日。  のんびりできそうで、落ち着かない。中途半端な休日だ。  しばらくベッドの上でぼんやりしていたら、バタンという玄関のドアの音がした。  母さんが出掛けたのだろう。 「あーあ……」  大きく伸びをして、ベッドから這い出る。さすがに腹が減っていた。  パジャマ姿のまま、キッチンに行く。  静かな家の中は、ちょっとよそよそしい。  今更留守番をはしゃぐ歳でもないが、口うるさい監視の目がないのは気楽だ。  冷蔵庫の中から、夕べの残りの唐揚げと、ソーセージ、真空パックの保存袋に入った食パンを持って、リビングのテーブルに置く。  マグカップに牛乳を注ぎ、バナナを一本ちぎり、ティッシュの箱を掴んで、無造作にテーブルの上に追加した。  ソファにだらしなく凭れて、テレビを見ながら食べる。これは、親のいない休日の特権だ。
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