第2章 目的の始まり

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 平日昼間の番組は、はっきりいって若者向けではなかった。  情報番組は主婦向けのファッションや節約グルメの話題ばかりだし、チャンネルを変えたところで、ローカルニュースか再放送のドラマくらいしかやっていない。  適当にニュースを流していたら、隣町の変死事件が流れてきた。 『――男性の遺体は、死後ひと月ほど経って損傷が進んでおり、警察は司法解剖を行って、死因の特定を急ぐとのことです。また、男性の遺体が見つかった部屋のドアには鍵がかかっており、警察は事件と事故の両方で捜査を進めています。……では、天気予報です――』  この蒸し暑い時期に、損傷か……食欲を無くしそうになるので、考えないようにする。  週末の雨の予報を聞きながら、牛乳を飲み干した。 -*-*-*-  腹が膨れたので、とりあえずシャワーを浴びた。  地肌にまとわりついていた汗が流れて、さっぱりする。ラフなTシャツと短パンに着替えて、冷蔵庫から出した麦茶を飲むと、初夏の暑さが少し消えた。  仕方ない。この心地好い感覚の内に、机に向かおう。呑気な僕でも、受験生という自覚はある。  第一志望は、県外の公立大学だ。特に魅力的なキャンパスという訳ではないのだが、頑張れば手が届きそうなランクであり、この町を離れられることが最大の志望動機だった。  夏休み前の全国模試までに、実力を伸ばさないといけない。  部屋のエアコンのスイッチを入れて、学習机に着く。気合いを入れて、『数学Ⅱ』の問題集を開いた。 -*-*-*- 「――――っくしゅん!」  エアコンの設定が強すぎたのか、気がついたら肌寒い。  鼻をかんで、エアコンを止め、窓を細く開けた。冷やしておきながら冷気を逃がすなんて、我ながら何をやってるんだか。  問題集は『英語』を経て、『生物』に移っていた。  時計はもうすぐ4時を指す。集中していたせいで、気がつかなかったが、母さんはまだ帰ってきていないようだ。  ――また、オバ友会かな。  婦人会の活動の後、どうせ仲間達と井戸端会議に花を咲かせているんだろう。  ――ザッ……ザッ……  ふと、妙な音にペンが止まる。  ――ザッ……ザッ……  不規則なその音は、どうやら外から聞こえてくる。開けた窓から、屋外の音が入ってくるのだ。  ――ザッ……ザッ…… 「……何なんだよ」
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