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「…さて、香織ちゃんに漫画も渡したことだし、大成のメシを作るとすっか」
愛華姉はそう言ってカウンターの中に戻ると、冷蔵庫から材料を取り出しながら
「香織ちゃんも食べてく?今日は塾の日じゃないんだろ?」
と尋ねた。
「良いんですか?じゃぁお言葉に甘えて♪」
香織はそう答えると、ちょこんと元の席に着く。
俺は『やれやれ』の言葉の代わりにため息をついて隣に座った。
「…あ、お母さんに『晩御飯要らない』って電話しなきゃ」
水を一口飲んだ香織がそう言って自分の鞄の中を探り始めた。
しかし、『あれ?』という言葉が出たかと思うと、鞄を探る手の動きが止まった。
「…スマホが無い」
「…え?」
俺は再び眉間にシワを寄せた。
「道場の更衣室かなぁ…部活の直前にちょっとスマホ見てたしぃ…」
うなだれる香織を見ながら、愛華姉は苦笑いをする。
「…じゃぁとりあえず、お母さんへの電話は早い方が良いだろうからコレでかけるとして…」
そう言って愛華姉は香織のそばに電話の子機を置くと、顎をクッと動かして俺を示す。
「…大成と一緒に学校にスマホを取りに行きなよ。その間にメシ作っとくからさ」
愛華姉の言葉に、俺は再び『やれやれ』のため息をつく。
その様子に愛華姉は俺を見ながら、
「もう外が暗くなってきてるし、女の子一人は良くねぇだろ」
と言葉を続けてニッと笑った。
その笑顔になぜか妙な威圧感を感じた俺は…
「…へいへい」
…と承諾の返事をするしかなかった。
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