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「…しかしまぁあれだけオンボロなんだし、幽霊の1匹や2匹居てもおかしくねぇかもなぁ~」
愛華姉のその言葉に、俺は心の中で妙に納得した気持ちで確かに、と頷く。
「それか、怨念が溜まりに溜まってんのかもなぁ~」
「…『怨念』?」
耳に入った物騒な言葉に、俺は思わず聞き返した。
「あのオンボロ棟、アタシの代の時点で充分オンボロでさぁ…」
不気味なワードを出した割に、愛華姉は変わらずニヤニヤしたまま話し始める。
「ある日、写真部の男子生徒が演劇部の女の先輩見たさに、覗き穴作っちゃって」
愛華姉のその言葉を聞いた瞬間、俺と香織を包んでいた暗く重みがあったはずの空気が一気に晴れて、急に緊張感の無いものに変わった。
「…は?」
俺は思わず眉間にシワを寄せた。
「…で、割とすぐに覗きがバレて大変だったみたいだぜぇ、その写真部のヤツ」
『幽霊』を見てから暗かった香織の表情も、ポカンとしたものに変わる。
「覗かれた女子や覗きがバレた男子の怨念が渦巻いてたりして♪」
カラカラと笑う愛華姉の話に俺はハァ、とため息をつくと、
「…アホくせぇ」
と呟いた。
香織もハハハ、と苦笑いを浮かべる…まぁ苦笑いでも笑うようになっただけマシか。
「…悪ぃ悪ぃ、話が脱線しちゃったね…それで?」
愛華姉はそう言ってコーヒーを飲むと、にっこりと笑って言葉を続けた。
「…どんなのだったって?その『クラブ棟の幽霊』ってのは」
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