CONFUSED BLUE

14/36
前へ
/36ページ
次へ
 昼休みになり、俺はクラブ棟の2階の『例の』部屋にやって来た。 「…大成~…止めようよ~…」  ついて来た香織は部屋の入口で中を気にしているものの、入って来る気は無いようだ。 「こんな真っ昼間に幽霊なんか出やしねーって」  俺は香織の言葉に振り返ることなく返事をすると、部屋の中をあちこち見ながら半周した。 「…やっぱ仕掛けだのその跡だのはねぇよなぁ…」  窓の前で部屋を見渡しながらそう呟くと、通らなかった方の壁沿いを歩く。  その途中、部屋の幅の真ん中あたりで俺のへそぐらいの高さの所に穴が開いているのを見つけた。 「…もしかしてこれかぁ…愛華姉が言ってた『覗き穴』って…?」  俺が何気なしに穴を覗くと、向こう側から人間の目が見えた。 「──ぅわっ!?」  俺は弾かれたかのように穴から顔を離すと、その勢いのまましりもちをついてしまった。 「どうしたの!?」  俺の様子に驚いた香織が声をかけるが、軽くパニックになっている俺の頭がうまく回らず言葉が出ない。 「えっ、あ…えっと…」  俺が言葉にならないまま何とか返事をしていると、隣の部屋からガラッと戸が開く音がした。  その音にビクッと肩をすくめた香織を見て、俺はあわてて立ち上がって入口へと駆け寄った。  その数秒の間に隣の部屋から出てきた人物を先に確認した香織がホッと息をつく。 「…香織…?」  香織の様子から心配する必要は無いと思ったものの、誰が居るのか気になった俺はヒョイと廊下に顔を出した。  香織の方へと歩み寄ってきていた女子生徒は、俺の顔を見てペコリと頭を下げた。 「…ごめんなさい、驚かせちゃって…」  そう言って頭を上げたその女子生徒は少しずれた眼鏡を指で直し、肩につくかつかないかの長さの横髪を耳にかけた。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加