CONFUSED BLUE

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「…話し声が聞こえて、誰かなぁと思って覗いたんです」  彼女はそう言って部屋がある方の壁を見ると、 「…演劇部が新しい部室に引っ越してから、この部屋を使う人なんて居なかったから…」 と言葉を続けた。 「…『幽霊』が出るもんね…」  香織が苦笑いをしながらボソッと呟く。  それを耳で拾った俺も思わず苦笑いをしてしまった。 「…俺も悪かったよ。隣に人が居ると思わなかったから、考え無しに覗いちまったしな」  廊下に出た俺が頭を掻きながらそう言うと、彼女はクスッと笑った。 「えーと…香織と同じクラスだったっけ?」  そう尋ねると、香織はコクリと頷いた。 「鈴原美紀さん、塾も同じなの。鈴原さん、コイツは本木大成っていって、アタシの幼なじみ」 「…『コイツ』って…」  香織の言葉にため息をついていると、そんな俺たちのやりとりを見ていた女子生徒・鈴原がクスクスと笑う。 「それで鈴原さん、隣で何してたの?」  香織が尋ねると鈴原はあぁ、と声をあげた。 「写真部の部室の荷物を片付けてたんです。昼休みとかの休み時間も頑張らないと、一人じゃなかなかで…」  鈴原が苦笑いをしながらそう答えると、香織が怪訝そうな顔をする。 「一人で?写真部員って他に居ないの?」 「3年生は引退しちゃったし、2年生は元々居なくて…」  鈴原はそう言って表情を曇らせると、 「…他の1年生が居なくはないんだけど…」 と言葉を続けた。 「…手伝ってくれないのか?」  俺の問いかけに、鈴原がコクリと頷く。  それを見ていた香織は少し考えてから、 「…じゃぁアタシたちが手伝おうか?」 と申し出た。 「えっ?」  鈴原が驚いた様子で顔を上げる。 「…アタシ『たち』って、俺もかよ…」  俺がボソッと呟くと、香織が肘で俺の腕を小突いた。 「どーせヒマでしょ?わざわざ幽霊部屋を調べに来るぐらいなんだから」 「でも悪いですよ、二人とも写真部とは無関係なのに」  遠慮する鈴原に香織はいーのいーの、と笑って伝えながら俺を見る。  俺は頭を掻きながらため息をつくと、 「…へいへい」 と香織の視線に答えた。
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