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『幽霊部屋』と言われるようになった元演劇部の部室の戸を閉めた俺は、香織と共に初めて入った写真部の部室の中をキョロキョロと見回した。
写真関係の雑誌やアルバム等が並んでいるカラーボックス、ノートパソコンやプリンターが置かれた机、壁の所々に貼られている少し色褪せた写真、中身が入っていたりいなかったりの段ボール箱の数々…。
日頃の部室がどうだったのかは知らないが、ガランとした隣の部屋と比べてしまうからか、片付けが進んでいるとは思えない。
「…これ一人じゃ大変だろ…」
俺の呟きに、香織がウンウンと頷く。
「ホント…暇な時に手伝いに来ようか?アタシたち」
香織の申し出に、俺が文末に関するツッコミを入れる前に鈴原が首を横に振る。
「ホントに大丈夫ですから…今、手伝ってもらうのも申し訳ないぐらいですし…」
「気にしなくて良いよ、手伝うって言ったのは俺らだし」
鈴原の言葉に俺はそう答えると、そばにある段ボール箱を持ち上げた。
「…とりあえずこの辺りの段ボールでも運べば良いか?詰め終わってるみたいだし」
「あ、ホントだ。じゃぁアタシも…」
俺に続いて段ボールを持ち上げようとする香織の手を鈴原が止める。
「スミマセン、その辺は処分する物なので…」
鈴原はそう言うと、俺の手から段ボール箱を取って元の場所に置いた。
「…何が入ってるの?」
香織が興味津々といった様子で尋ねると、鈴原は俺が運ぼうとした段ボール箱を開けてみせた。
「…フィルム写真の頃の道具です。前は顧問の先生がこの部屋を半分に区切って、現像もしてたみたいですよ」
鈴原の言葉に俺はあぁ、と納得の声を上げて天井を見た。
「…それでこんなど真ん中にカーテンレールが通ってんのか」
「はい、暗幕で光が入らないようになってるみたいです」
鈴原がそう答える横で、香織が箱から何かを取り出す。
「鈴原さん、コレは?」
その手に持っていたのは、数枚のカラーフィルムだった。
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