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部活が終わって駐輪所に来た俺は、自分の自転車の籠に鞄を入れた。
「大成!今日も『コミック』に行くんでしょ?」
さぁ帰ろうとペダルに足をかける寸前に後ろから声をかけられて、俺は少し浮かせていた足をその場に下ろして振り返った。
…あ、そういえば何度か名前が出てるのに、自己紹介がまだだったっけ…?
…俺は本木大成、16歳、高校1年、剣道部。
168cm、60kg…中肉中背…ってヤツかなぁ?
父親は所轄署の刑事、職場恋愛から結婚に至った母親は中学に上がる前に病死して、父子二人暮らしだ。
俺も警察官になって、ゆくゆくはオヤジみたいな刑事になりたいと思っていたりする…まぁ俺の話はこんなトコで良いか?
「あぁ」
俺はそう返事をすると、
「お前も行くのか?香織」
と声の主に尋ねた。
同じく剣道部員で小学生の時からの幼なじみ、香織だ。
香織は…身長は俺の鼻ぐらいの高さ、華奢そうな体つきながら実は全国大会に出場するほど強かったりする。
『防具を着けるのに邪魔だから』と、初めて会った時から変わらず短めの髪型。
…ちなみに香織が言ってる『コミック』というのは俺の叔母が経営している喫茶店である。
「うん、借りたい漫画があるの…愛華さんなら持ってるかなぁと思って」
香織はそう言って、自転車を押しながら俺の隣に来た。
そう、俺には『愛華』という名の叔母がいる。
…と言っても、オヤジと歳が離れた妹で、叔母というより親戚のお姉さんといった感覚な事もあって、チビの頃は『愛華姉ちゃん』と呼んでいた。
…今は『ちゃん』を外して『愛華姉』って呼んでるけど。
祖父母が経営していた喫茶店を継いだ愛華姉は、俺とオヤジのメシの世話をしてくれたり、相談や愚痴を聞いてくれたりする。
マンガ喫茶…もとい、多くの漫画が置かれている喫茶店『コミック』の女主人、本木愛華。
その実態は…俺は『すっげぇ変わり者』だと思っている。
「…じゃぁ一緒に行くか?」
俺の言葉に、隣に並んだ幼なじみはウンと頷いた。
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