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「…は?覚えてない?」
俺は眉間にシワを寄せた。
それを見て、香織がしどろもどろに話し始める。
「…前のテスト期間中に真由美ン家でテスト勉強して、休憩した時にちょっと読ませてもらった漫画でさぁ…」
「…だったらその友達に借りれば良いじゃねぇか」
俺の提案に、香織は苦笑いをしながらそれが…と言葉を続ける。
「…見飽きたからって、年末の掃除の時に処分しちゃったんだって…だから愛華さんが持ってないかなぁと思って…」
「お前なぁ…」
呆れ顔の俺と違い、愛華姉は微笑みを絶やす事なく
「その漫画、どんな話だったの?」
と尋ねた。
…どうやら愛華姉の実態が暴かれ…もとい、本領発揮の時が来たようだ。
「え~と…女の子が古い本の中の世界に入っちゃって、伝説の巫女として冒険する…」
香織がそこまで話したところで、愛華姉があぁ、と声を上げてスタスタと迷いなく本棚に向かう。
「…これじゃない?」
そう言って愛華姉が差し出した漫画を見て、香織はパッと表情を明るくさせた。
「あっ、これです!『摩訶不思議遊戯』!」
香織は愛華姉からその漫画を受け取ると、
「さっすが愛華さん♪」
と言葉を続けた。
「…位置まで覚えてんのか…」
俺は驚き半分呆れ半分の呟きを漏らした。
…だって店の主人だからって普通覚えてるか?
この『コミック』には2面の壁一杯の本棚だけじゃなく、5つのテーブル席を仕切るのにも俺の胸ぐらいの高さの本棚を使っていて、その全てが漫画で埋まっているんだぞ?
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