3人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
職員室に武道館の鍵を返した香織が階段を下りてくる。
「…スマホ、すぐに見つかって良かったな」
俺の言葉に香織はウン、と頷いた。
校舎を出て駐輪所に戻りながら空を見上げた香織は、いつもの明るさが少し萎んだ顔で、
「すっかり暗くなっちゃった…ゴメンね、大成」
と謝罪する。
「いいよ、どうせメシができるまで時間があったんだし」
俺がぶっきらぼうにそう返事をすると、香織はクスッと笑って
「…ありがと」
と呟いた。
駐輪所に着いてからも自転車には乗らず、押しながら校門へと歩く。
校舎の横を通り過ぎて校門が見え始めた頃、俺の腹の虫が鳴いた。
「腹減った…」
「私も。愛華さんのご飯すごく美味しいから、今日のも楽しみ♪」
少し前を歩く香織が、明るさを取り戻してウキウキした様子でそう言って振り返る。
「今日のご飯、何だろ?オムライスだと良いなぁ~…大成は?」
「…食い物の話してたら余計に腹減るから言わねー」
俺の返事に香織はアハハと声を上げて笑うと、再び前を向いて歩き出す。
その足取りがスキップを始めるように弾んだかと思うと、すぐにピタリと止まった。
「…どうした?香織」
俺の問いかけに、香織は振り返ることなく自分の目線の先を指さした。
「…あれ何だろ…青っぽくボヤァッと光ってるの…」
「ん?」
香織の隣に並んだ俺は、指さす方向を目で追っていく。
その先にはクラブ棟があり、入り口に鍵を閉めようとしているらしい用務員が近づいている。
そして2階の角部屋の窓に、確かにうっすらと青白い光が見える。
「何だぁ…?」
俺が目を凝らしながらクラブ棟に近づいていくと、その光の輪郭がはっきりと見えてきた。
「──!」
光の中に映る姿が解った俺は、思わず足を止めた。
「…女が…浮いてる…!?」
最初のコメントを投稿しよう!