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正確に言えば、その青白い光の中の人物の性別は解らない。
頭から布のような物を被り、髪型はもちろん目元もよく見えない…しかし、口元や顎の形は女だと思わせるものだった。
その人物が、天井からぶら下がっているかのように逆さに浮いている。
「…もしかしてあれが…『クラブ棟の幽霊』…!?」
香織がそう呟いた時だった。
その『幽霊』はゆっくりと横に移動し、光と共に消えた。
「香織、自転車頼む!」
俺はそう言いながらその場に自転車を停めると、クラブ棟へと走った。
「ちょっと、大成!」
後ろから聞こえる香織の叫び声をスルーして、鍵を閉めて立ち去ろうとする用務員に声をかける。
「おじさん!悪ぃけど鍵開けてくれ!」
「お?どうした、忘れ物かい?」
用務員が鍵を開けながら尋ねるが、説明が面倒だと思った俺は、
「…まぁそんなトコ!」
と答えて中に入った。
廊下の電気を点けて階段へと向かう。
…『幽霊』が消えてからまだ5分も経ってない、何か仕掛けが残ってるに決まってる。
階段を駆け上がり『幽霊』が居た部屋の前に来た俺は、ガラッと勢い良く戸を開けた。
「…えっ…?」
部屋の電気を着けた俺が見たのは、がらんとした寂しい部屋と、その中にぽつんと立っているキャスター付きの鏡だった。
「この部屋は最近誰も使ってないけどねぇ…」
後からついて来た用務員が息を整えながら言う。
俺は窓へと歩み寄ると、開けて外に居る香織に向かって叫んだ。
「香織!何か変わった事あったか!?」
「ううんー、何も無かったよー!」
香織の言葉に、俺の頭の中に困惑の渦が広がる。
「…何かのトリックじゃねぇのか…?」
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