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再び『コミック』のドアを開くと、愛華姉がフライパンを流しに置くところだった。
「おーお帰りー。ちょうど今メシができたトコ…」
顔を上げた愛華姉は香織を見て言葉を詰まらせ、眉間にシワを寄せる。
「…どうした香織ちゃん、顔色悪いぞ…?」
そう言ってカウンターから出てくると、香織を椅子に座らせた。
「…何があった?」
俺の顔を見て問いかける愛華姉に俺はふぅ、とため息をつくと、頭を掻きながら香織の隣に座った。
「…『クラブ棟の幽霊』?」
カウンターにデミグラスソースのオムライスを2皿置いた愛華姉が、再び眉間にシワを寄せる。
「クラブ棟…って、校門入って左に行ったトコにあるオンボロの?」
そう言いながら俺たちにスプーンを差し出し、グラスに水を入れていく。
俺たちは手を合わせてからオムライスをすくい、一口目を口に運んだ。
「そうそう。最近噂になってたんだよ、幽霊が出るって」
俺はそう言うと、次は付け合わせのポテトサラダの固まりをバクリと一口で頬張った。
「…校門を出ようとした時に、クラブ棟の2階がボヤァッと青白く光って…」
そう言いながら、香織は楽しみにしていたはずのオムライスをもそもそと少しずつ食べる。
「すぐにその部屋に行ったんだけど、鏡があるだけで他には何も…」
俺は水を含んで口の中に残っていたポテトサラダを飲み込むと、
「…絶対何か、映写機的なモンがあると思ったのに…」
と言葉を続けた。
「ホントに鏡しか無かったのかぁ~?」
グラスに水を継ぎ足しながらからかうように言う愛華姉に、俺は少しムカつきながらもああ、と答える。
「キャスター付きのでっかい鏡が、部屋の真ん中にデーンと斜めに置いてあっただけだよ」
それを聞いて、愛華姉はまだニヤニヤしながらふぅん、と返事をしてコーヒーを飲んだ。
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