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エルマーは今度は、ライリーの弟になった。フォーゲル侯爵家の嫡男だ。エルマーは今度こそ、ライリーを失いたくなかった。なので姉のライリーにも、父母の侯爵夫妻にもさまざまな忠告を与えた。
しかしエルマーの言葉はいかされなかった。ライリーは殺されて、フォーゲル家は没落の一途をたどった。エルマーは無力感にさいなまれた。そんなエルマーを支えてくれたのは、王家傍流のクンツという男だった。クンツは賢く公平で、人格者でもあった。
(もしも彼が王位についていたら、この国はどうなっていたのだろう)
エルマーは何度も思った。なぜならライリーの死後、王国は乱れた。原因はいろいろあった。そのひとつは、オーラフ国王が国教をアウィス教からテンス教に変えたことだった。
アウィス教とテンス教の争いは、血を流すものまで発展した。エルマーはアウィス教徒として武器を持って戦い、テンス教徒たちに殺された。
次にエルマーは、初めて女性になった。黒色の巻き毛を持つ貴族の令嬢だ。エルマーは王立学校で、ライリーと親友になった。ライリーはエルマーの忠告をよく聞いてくれた。
「あなたのいうとおりよ。ラルス殿下との婚約はやめるべきだわ。お父様に婚約の解消をお願いする」
嫉妬に苦しみながらも、ライリーは決心した。エルマーは泣いて喜び、ライリーに永遠の友情を誓った。けれど幸福は長く続かなかった。
ライリーの父母は、婚約を続けるようにライリーに言い渡したのだ。なのでエルマーとライリーは、ラルスに婚約の解消をせまった。それでも無理なら、国王に直訴するつもりだった。するとラルスは、
「女が意見するとは何ごとだ!? 学校に通えるようになっただけで、賢者ぶるな」
と激怒し、エルマーとライリーはあっさり殺された。女は嫌だ。力がほしかった。
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