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リーディアは、地方に住む豪農の娘だ。家の発展と自身の栄達のために、王都へやってきた。そして条件のいい結婚相手を探すために、学校に入学したのだ。もちろん勉学のためもあるが。
エルマーは、リーディアの生き方や価値観は嫌いではない。むしろ現実的と思っている。しかしリーディアのせいで、ライリーの人生はくるった。なのでリーディアは嫌いだ。
前回までリーディアは、王子のラルスをねらった。だが今回はどう動くのか。ラルスは今、落ちぶれた貴族の少年だ。エルマーにはリーディアの動きが読めず、不安だった。
「調子が悪い原因は、君の大切な婚約者かい?」
クンツは心配そうに問いかけた。それからグラスを取り、ワインの香りを楽しむ。
「のみたまえ。君のために用意した最上級のものだ」
「ありがとうございます。ライリーが学校でどうしているのか、心配なだけです」
エルマーは適当にワインを飲んだ。クンツがあきれたように、貴重なワインなのにとつぶやく。
「僕は今、切実に女性になりたいです。僕が女性だったとき、僕とライリーは学校でずっと一緒でした。親友だったので、トイレも一緒に行きました。あんなにも僕たちの心は近かったのに」
エルマーは真剣だった。ところがクンツは苦笑して、エルマーから身を引いた。
「いい加減、ライリー嬢と結婚したらどうだね? 彼女はもう十六才だろう」
「なぜ僕とライリーが結婚するのですか?」
エルマーはきょとんとした。クンツは困ったように笑って、チーズを一口食べる。
「婚約したら、次は結婚するものだよ」
優しく教えさとすように言う。
「そうですか」
エルマーはため息をはいて、暗くうつむいた。エルマーにとって婚約とは、常に裏切られるものだった。
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