喜劇1 なんで私を閉じこめるの!?

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「犬だったときのように、ずっと君のそばにいて君を守りたい。毎晩、君のベッドの下で寝ていたのに」  エルマーは苦悩し、頭をかかえる。ライリーの口もとは引きつる。その手の変態発言はやめてほしい。エルマーは顔を上げ、苦しげに頼みこんできた。 「ライリー、王立学校をやめてくれないか?」  ライリーは顔を思い切りしかめる。 「また、そのお願いなの? 私に学問を勧めるあなたが、なぜ退学を促すのか理解できない」  ライリーの通っている王立学校は、王国で一番規模の大きい学校だ。学校の敷地内にある図書館も大きく、いろいろな本がそろっている。ライリーのお気に入りの場所だ。  昔は、貴族の家に生まれた男子しか通えなかった。しかし今は女子も、貴族以外の家の者も通える。ただ、やはり貴族の男子が多数を占めるが。 「だが、あの学校は問題を起こす生徒も多い。君をそんな危険な場所に置いておきたくない」  エルマーは本当に心配しているようだった。学校には、十代二十代の男女が多い。なので、すいたほれたの騒ぎが起きやすいのだ。また、よい結婚相手を見つけるために学校に通う女性もいる。 「確かに去年、駆け落ち騒ぎが起きたわ。結婚を両親に反対された男女が、王都にあるテンス教の教会に逃げた」  テンス教は南の国々で信仰されている宗教だ。この国では長い間、信仰を禁止されていた。だが国王クンツにより信仰が許されるようになり、王都にも大きな教会がたった。  テンス教は自主、自立をモットーとする。なので本人たちの意志さえあれば、周囲が反対していても結婚できるのだ。恋を成就させた本人たちは幸せだが、両親たちは激怒しているという。 「でも私は、国教であるアウィス教を信仰している。それにあなたがいるのに、別の男性と駆け落ちなんてしない」  ライリーは言った後で、顔を赤くした。ライリーはエルマーと結婚する。ライリーの年齢を考えると、そろそろ結婚式の準備とかが始まるはずだ。ライリーには不本意だが。ものすごーく不本意だが。
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