99人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
「犬だったときのように、ずっと君のそばにいて君を守りたい。毎晩、君のベッドの下で寝ていたのに」
エルマーは苦悩し、頭をかかえる。ライリーの口もとは引きつる。その手の変態発言はやめてほしい。エルマーは顔を上げ、苦しげに頼みこんできた。
「ライリー、王立学校をやめてくれないか?」
ライリーは顔を思い切りしかめる。
「また、そのお願いなの? 私に学問を勧めるあなたが、なぜ退学を促すのか理解できない」
ライリーの通っている王立学校は、王国で一番規模の大きい学校だ。学校の敷地内にある図書館も大きく、いろいろな本がそろっている。ライリーのお気に入りの場所だ。
昔は、貴族の家に生まれた男子しか通えなかった。しかし今は女子も、貴族以外の家の者も通える。ただ、やはり貴族の男子が多数を占めるが。
「だが、あの学校は問題を起こす生徒も多い。君をそんな危険な場所に置いておきたくない」
エルマーは本当に心配しているようだった。学校には、十代二十代の男女が多い。なので、すいたほれたの騒ぎが起きやすいのだ。また、よい結婚相手を見つけるために学校に通う女性もいる。
「確かに去年、駆け落ち騒ぎが起きたわ。結婚を両親に反対された男女が、王都にあるテンス教の教会に逃げた」
テンス教は南の国々で信仰されている宗教だ。この国では長い間、信仰を禁止されていた。だが国王クンツにより信仰が許されるようになり、王都にも大きな教会がたった。
テンス教は自主、自立をモットーとする。なので本人たちの意志さえあれば、周囲が反対していても結婚できるのだ。恋を成就させた本人たちは幸せだが、両親たちは激怒しているという。
「でも私は、国教であるアウィス教を信仰している。それにあなたがいるのに、別の男性と駆け落ちなんてしない」
ライリーは言った後で、顔を赤くした。ライリーはエルマーと結婚する。ライリーの年齢を考えると、そろそろ結婚式の準備とかが始まるはずだ。ライリーには不本意だが。ものすごーく不本意だが。
最初のコメントを投稿しよう!