3月 ホワイトデー

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「……、は?」  ソファ下に落ちた雑誌を拾い上げる俺を、意味が分からないとでも言いたげな涼介の目が見上げくる。  たっぷり数秒見つめ合ったそれは、状況を理解するなり羞恥と怒りに震え、遠慮ない力で胸を押された。 「っ、知るかよ! んなもん、適当になんか買ってくればいいだろっ」 「えー。そういうの、涼介のが詳しそうじゃん」 「なんでだよ。貰ってんの、お前の方が多いんだし、返し慣れてるだろうが!」 「いや俺、ちゃんと返したことないから」  ぐいぐいと押される体を押し返すせいで、拮抗していたそれが一瞬の隙をついて崩れる。とさっとソファに押し倒された涼介は、その事実ではないところにきょとりと目を瞬かせた。 「え、お前。返したこと、ないの?」 「ないよ。勝手にくれたものに、なんで返す必要が?」 「……失礼なやつだな、お前」 「本命以外には優しくしない主義なもんで」  よく言うと、饒舌な涼介の瞳が胡乱げに陰る。  クリーム色のソファに散る黒く艶やかな涼介の髪を、するりと指先に絡めれば、涼介が不満げに鼻を鳴らした。
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