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「変わらず仲良くいましょうって、変に気持たせるようなものじゃなければ、なんだっていいだろ」
「……菓子折り、とか?」
「人数多いならそれもいいんじゃないか」
涙の跡のように頬に残る雫を指先で拭えば、興味がなさそうに賛同していた涼介がふっと口を噤む。自然と伏せられた睫毛の細い影に、自然と喉が鳴った。
「涼介は? 欲しいもんとか、ねえの?」
「俺? ……、別に。なにも」
迷うように揺れた視線がちらりと俺を見上げ、やっぱりやめたとばかりに、ソファの背もたれへと注がれる。明らかに、何かを隠した態度だ。
「なに、今の間」
「考えたけど何も思いつかなかった」
「本当に?」
「嘘吐いてどうすんだよ」
ふっと可笑しそうに笑った涼介の、俺の首に回る腕に少し力がこもる。するならさっさとしろと、誤魔化すそれに流されるか否か悩む頭は、じっと強請る瞳に呆気なく崩れ落ちた。
待ち侘びる唇が、触れる寸前にふるりと震える。
なんとなくチョコレートの味を彷彿とさせる、甘く柔らかい舌の感触が、どちらからともなく熱っぼい息をつかせた。
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