7月 七夕

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「出かけないか」  7月7日。休日にもかかわらず珍しく早起きだった聖司が、ぱらりと雑誌をめくりながら独り言のようにそう言う。  布団に甘えて起床が遅れた俺は、朝食のトーストを齧りかけたまま、きょとりと振り向かない聖司を見つめた。 「……今日? 今から?」 「何か用事あったか?」 「いや、別になにもないけど……急にどうした?」  基本的に、聖司は用事がない限り家を出たがらない。特に遠慮ない日差しが降り注ぐこの時期、梅雨の湿気やら鋭い熱気やらが入り乱れる夏になんて、冷房以外は信じられないとまで言い出しかねなほどなのに。  つい怪しむように黒髪を睨んでいた俺は、ふと振り向いた聖司の、ほんの少しだけ沈んだ目に後悔をした。  音も立てず、聖司が雑誌を置いてソファから立ち上がる。 「別にどうってこともないけど。たまには出かけるかなと思っただけ。嫌ならいい」 「い、嫌なんて言ってないだろっ」  拗ねたように言い捨てて部屋に戻ろうとしていた聖司が、思わず音を立てて立ち上がった俺を、じとりと振り返る。  ならどうするんだというその目に、おずおず椅子に座り直した俺は、いくらか固くなったパンの端にそっと歯を立てた。
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