7月 七夕

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「……別に嫌なわけじゃない。ただ、この天気なのに出かけようなんて、珍しいなと思っただけで」  立ち尽くす聖司の奥で、ベランダを濡らすように降り続く雨の粒が窓ガラスを伝い落ちていく。  夏に次いで雨の日を嫌うお前を知っているからこその違和感だと言えば、聖司は少し居心地悪そうにしかめた顔をふいっと逸らした。 「車でも借りればいいかと思って」 「車? え、そんな遠出すんの?」 「遠出じゃない。歩くより楽かと思っただけ」 「……、お前。どこ行く気だよ」  いよいよ怪しくなってきたそれに、カシカシとハムスターみたいにパンをかじりながら問えば、視線が逸れる。言えないと呟いた聖司の顔が、これ以上聞いてくれるなと訴えかけてくるようでますます怪しい。  互いになにも言わず、ただじとりと睨む目は逸らさずにいた俺に、聖司はついに深くため息を吐き、面倒そうにうなじを掻いた。 「……まぁ、もういいよ。忘れて」 「は?」 「別にただの思いつきだったし」  どうしても、行き先は告げたくないらしい。  この話は終わりとばかりにそう言って、そそくさと自室に逃げ込もうとするその背中に、今度は俺がため息を吐く番だった。
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