7月 七夕

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「1時間半」 「は?」 「1時間半だけ待って。片付けして用意するから」  とうとうパサつき始めたパンの最後を口に放り込んで、答えに窮する聖司の返事を待つ。否は絶対にないとしても、果たして素直に頷くだろうか。 「……、ありがと」 「、」 「車借りれるか、電話してみる」 「……、ん」  そんなに、行きたい場所だったのか。  あんまり素直なその反応と、少し浮かれたような声が意外で、いそいそ部屋に戻っていく背中を見送るしかできない。 「……俺が言っても、出ないくせに」  季節も天気も問わず、気分が乗らないときはテコでも動かない聖司を思い出して、なんとなくモヤっとする。  誰の入れ知恵か、はたまた何を見たのか知らないが、大嫌いな梅雨時でも出かけたいなんて、負けた気分で悔しくなっても仕方あるまい。  誰に言うでもない言い訳と愚痴を胸中で呟きながら、俺は冷めた珈琲で乾いたパンを押し流した。
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