7人が本棚に入れています
本棚に追加
* * *
「……、プラネタリウム?」
無事に友人に借りられたという車を降り、差し出された傘の中から見上げた覚えのある建物に、ついそう呟く。
ケーキに添えるアイスのような青い半円のドームが、洋画に出てくるロボットを彷彿とさせた。
「涼介」
ぽけっとそれを見上げていた俺を、数歩先で立ち止まる聖司が呼ぶ。駆け寄った時にぶつかった紺色の大きな傘から、ぱらぱらと雨粒が落ちた。
「なぁ、ここって昔来たことある?」
「小学生の時の授業と、あとは母さんたちとも来たと思うけど」
「あー。だから見覚えあるのか」
きょろきょろと珍しいものを見るように目を走らせてみれば、不思議とパズルのピースのような記憶の欠片がポロポロ溢れてくる。
そういえば、校外学習のプラネタリウムが楽しかったからと、雨を嫌がる聖司を説得した上で、優美さんに強請ったこともあったっけ。
「思い出したか?」
「なんとなく」
ちらりと上げた視線が、傘の分いつもより遠くを歩く聖司のそれと重なる。並んで歩くと、身長差のせいで見上げる形になるのが、いつも少しだけ悔しい。
最初のコメントを投稿しよう!