8人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「あれ、全部断ってくるなら。……来年は、考えてやらないことも、ない」
「……あれって、あれ?」
「他に何があんだよ」
驚いたような聖司の声に今更恥ずかしくなって、赤らんだ頬を隠すように、ふいっと目を逸らす。
たっぷり10秒後。聖司が吐いた安堵と喜びの混ざった笑みが、俺を苛む羞恥心をさらに煽った。
「あれ、気にしてくれてたんだ?」
わざわざ顔を覗き込む聖司の目が、嬉しそうにキラリと揺れる。悔しさと恥ずかしさに歪む顔は、絶対に見せたくない。
「別に。かさばって邪魔だなくらいにしか思ってないけど」
「でもあれがなかったらくれるんだろ?」
「……考えてやるってだけで、あげるなんて」
「全部断るよ」
調子がいい。するりと腹に回った腕に抱き寄せられ、高い体温が背中をじわじわと温めていく。
甘ったるく響く聖司の声に首をすくめながら、見えもしないのに、つい聖司の方を振り向きそうになる。
最初のコメントを投稿しよう!