2月 バレンタイン

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「やるなんて、一言も言ってないぞ」 「ゼロの可能性がイチになるんだろ。十分だ」 「カッコつけ」 「どうしても欲しいんだから仕方ないだろ」  ぶすっと膨れる唇に笑った聖司の声が近づき、首筋と顎の境目に柔い感触が落ちる。ぴくっと震えた肩が悔しくて、肘でこつくようにしてその体を押しやった。 「……とりあえず着替えてこい。飯出来るから」 「ん」 「それと。……あのチョコ全部使っていいなら、今年も、考えてやる」  途端。聖司の瞳が、とろりと甘ったるく緩んだ。 「楽しみにしとく」  離れていてくれて良かった。今すぐキスのひとつやふたつされそうなほど、ピンク色の空気がむず痒い。  聖司が自室に引っ込むなり宙をぱたぱたと手で扇いでから、静かに並ぶ紙袋の前に、すとんと屈み込んだ。
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