8人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「やるなんて、一言も言ってないぞ」
「ゼロの可能性がイチになるんだろ。十分だ」
「カッコつけ」
「どうしても欲しいんだから仕方ないだろ」
ぶすっと膨れる唇に笑った聖司の声が近づき、首筋と顎の境目に柔い感触が落ちる。ぴくっと震えた肩が悔しくて、肘でこつくようにしてその体を押しやった。
「……とりあえず着替えてこい。飯出来るから」
「ん」
「それと。……あのチョコ全部使っていいなら、今年も、考えてやる」
途端。聖司の瞳が、とろりと甘ったるく緩んだ。
「楽しみにしとく」
離れていてくれて良かった。今すぐキスのひとつやふたつされそうなほど、ピンク色の空気がむず痒い。
聖司が自室に引っ込むなり宙をぱたぱたと手で扇いでから、静かに並ぶ紙袋の前に、すとんと屈み込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!