2月 バレンタイン

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「とりあえず口にはさせるから、それで勘弁な」  きっと、いろんな思いがたくさん詰まっているものを、俺は素直に聖司へと届けてやれない。全部溶かして、全部塗り替えてからでないと、気が済まないなんて。 ──俺も大概、毒されてるなぁ……  独占欲というには、きっと強すぎる。外で自由にさせてやる代わりに、目の届くところでは、ちゃんと俺の聖司で居てほしいなんて。  綺麗にラッピングされた1つを指先で小突く。少しだけ、申し訳ない。 「腹減った」  つい物思いに耽っていた俺の背に、のしっと聖司の両手が乗っかる。思わずぐらりと前に傾きながら、その重さと体温にふっと頬を緩ませた。 ──せめて美味しく変えるから  俺はチョコレートたちに内心でそう声をかけてから、ゆっくりと膝を伸ばした。聖司の重さが消え、ハンバーグのくつくつ揺れる音がする。  その夜。まずはと用意したホットチョコレートに満足げに笑っていた聖司が、そこから3日続いたチョコレート尽くしに、来年からは絶対に断ろうと胸に固く誓ったことを俺は知らない。
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