8人が本棚に入れています
本棚に追加
/39ページ
「とりあえず口にはさせるから、それで勘弁な」
きっと、いろんな思いがたくさん詰まっているものを、俺は素直に聖司へと届けてやれない。全部溶かして、全部塗り替えてからでないと、気が済まないなんて。
──俺も大概、毒されてるなぁ……
独占欲というには、きっと強すぎる。外で自由にさせてやる代わりに、目の届くところでは、ちゃんと俺の聖司で居てほしいなんて。
綺麗にラッピングされた1つを指先で小突く。少しだけ、申し訳ない。
「腹減った」
つい物思いに耽っていた俺の背に、のしっと聖司の両手が乗っかる。思わずぐらりと前に傾きながら、その重さと体温にふっと頬を緩ませた。
──せめて美味しく変えるから
俺はチョコレートたちに内心でそう声をかけてから、ゆっくりと膝を伸ばした。聖司の重さが消え、ハンバーグのくつくつ揺れる音がする。
その夜。まずはと用意したホットチョコレートに満足げに笑っていた聖司が、そこから3日続いたチョコレート尽くしに、来年からは絶対に断ろうと胸に固く誓ったことを俺は知らない。
最初のコメントを投稿しよう!