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するとそこには、俺が今まで生きてきて観たことのない風景が広がっていた。
表現できる言葉が頭の中から消え、8ミリ映写機のモノクロ映画を観ているような風景に変わった。
かなり昔の記憶のようで、親父がシーツをスクリーン代わりにして映写機を回していた・・・
でも、内容が思い出せない、ただ何か昔の感覚が胸を熱くするが…
そんな気持ちを打ち消すように、空から真っ黒いものが落ちてきて、大きな爆破音と共に、目の奥が真っ赤になっていく錯覚に襲われた。
「はー、はー」と深くため息を吐いた。
我に返り、ゆっくり眼を開いてみた。
するとそこには、おぞましい風景が待ち構えていた。
テレビ塔の様なビルにつながり2、3キロぐらいの道程に何かが順序正しく並べられていた?
遠くばかりを観ていたせいか 「そのもの」を確認していなかった?
それは紛れも無く「人」であり屍であった。
転々と並べられた屍は、一番近いもので約五、六メートル先にあった。
屍は道路両端に置かれている。
直視したくないが、不思議と意識するようになってから目入り、避けることが出来ない。
意志はあまり伴わないが足が動き出していた。
何故死んで、何故ここに置かれているのかわからないが、置かれている屍は穏やかな顔をしていた。
頭の片隅で、何処かで観た様な?感じたような?気がした。
「そうか・・親父・・」
と訳のわからい独り言を口走っていた。
穏やかな屍の顔を見て、親父の葬儀が思い出された。
親父は身体が弱く、若くして結核を患い、肺が一つ無く、肩甲骨にそって大きな縫い目があった。
見るだけで痛々しく感じられた。
そんな親父だったが、身体を惜しまず仕事に、付き合いに精を出していた。
親父は俺の誇りだった!
しかし、片肺の無い親父にとって、楽ではなかったようだ。
酒と疲労から肝臓が弱り…
風邪の菌が肝臓に入り込み肝硬変から肝臓癌となり…
一カ月で死んでしまった。
五十六だった。
死、直後は赤黒い顔色だったが、埋葬の時は顔色も良く、穏やかな表情をしていたことが思い出された…
道路に並べられた、死体の顔から首を見ると、何か着けているのがわかった。
不思議にその先の人も、その先の人も、同じようなリングを着けていた。
そのとき突然エンジン音が聞こえ、余儀なくブルドーザとトラックが手前の曲がり角から現れた。
その車は屍を見て、想像通りの事をしはじめた。
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