第1章 ちがう世界へ

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時計の針は十二時を過ぎようとしていた、通常より長針の動きが速く長針と短針の重なりがわずかに思えた。 秒針が無い時計だからだろうか? 怖れをこらえて周囲を見渡してみた。 向こう側のホームに電車が着いていた、誰も降りる様子がない。 殺風景な駅で何処なのかもわからない。 重い足を進め改札口に向かった。 改札口にはひと気がなく、出口付近に小部屋があることに気づいた。 ノックをしてドアノブを回したが、しっかり鍵がかかっていた。 ドアの外から話し掛けてみた。 「ここは何処ですか?」 「電車はあるのですか?」 すると… 「もう電車はない・・・」 とドアの向こうから無機質な声で誰かが答えた。 人の声か? 録音された声か? はっきり聞き取れない、食道から胃へと不快な物が通過したような感じがして… それ以上の事を聞く気になれなくなり… その場に座り込んでしまった。
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