第1章 ちがう世界へ

5/7
前へ
/92ページ
次へ
自分で自分を正当化しょうとしている。 まったく意味のないことだが、焦りからこんな言い訳的な独り言を呟いていた。 「とにかく落ちつけ、とにかく落ちつけて」と自分に言い聞かせて納得させていた。 それにしても重苦しい空気を感じる・・・ 改札口の向こうは、真っ暗で何があるのか、想像もつかなかった。 ただ身体が震えている。 「何だこの感覚は・・・・」わからない、とてつもない恐怖が近づいている事を察知していた。 明るくなるまで動く気になれない、今、動けば自分を全て失ってしまうような気がしたからだ、生暖かい風が鼻孔に入り強烈な不快感を感じた。 それは、物凄い臭いであるそのため、ハンカチで鼻と口を覆った。 「なんだこのニオイは・・・」言葉を発した瞬間、呼吸を止めたくなるほどの悪臭だ。 今迄で、嗅いだ事がない強烈な何かが腐敗したような、発酵したような臭いが、僅かに開いた鼻孔から身体の中に浸透していく、胃が急激に収縮した瞬間、固定物が口にもどりむせ返るように嘔吐していた。 その臭いを追い出すかのように、吐き気が止まらず容赦なく胃と咽を締め付ける。 涙と共に嗚咽をあげ、むせ返しながらやっと呼吸をしていた。 その場に座り込み、膝を抱え丸くなり、訳のわからい恐怖に怯えていた… 薄っすらと明るくなり始めてきた、足取りは重く動き出す気に慣れ無い。 改札口を出るには、キップを渡す… などをするのだが… 特に何する事なく出られたのだが… 訳のわからない重苦しい空気… 理解できない現実… まだ頭も身体もこの世界? を受け入れられないでいた。
/92ページ

最初のコメントを投稿しよう!

50人が本棚に入れています
本棚に追加