第1章 ちがう世界へ

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「なんでこの世界に来てしまったのか?」何度も同じことばを繰り返していた。 どう考えても答えが出ない? 訳のわからないこの世界、全てを認められない自分がいた。 俺はいつもくすぶりながら生きてきた。 この場に居なくても、全てを認めたくなかった。 認めるのが怖くて逃げていた… 「何処に居ても同じだなぁ…」 そんな独りごとを口走ると、昨日の宴会が思い出された… 期がかわり桜も散った頃、毎年恒例になっている。 職場行事の幹事交代の為の宴会である。 年が経つに連れ、世代交代が余儀なくされ、仕事への情熱が薄れていたことに、気づき初めてたころから… この宴会はいつもしらけたものだと捉える様になっていた。 不満の捌け口をぶつけられず、聞いてもらえそうな人に、愚痴っていた。 上手くいかない、嫌な事ばかりをよく考えるようになっていた・・ チャンスを生かせず出世を逃し、願望意識だけが強くこれまでやって来た・・・ 俺はもうじき四十九を迎えようとしていた・・・ ふと昨日のことが頭を過ぎった。 …「かみさん、心配してるだろうなぁ」 「帰りたいな…」 そう切実に思った。 訳もなく涙が流れていた。 それは、今の寂しさと今迄の自分への甘さの後悔からか、心が虚しさに占領され、涙が止めどなく流れていた。 そんな時、穏やかな口調で誰かが俺に囁いた・・・ 「逃げるな、逃げるな」・・・ 怖じ気づいている気持ちを断ち切るかのように、今度は強い口調で… 「逃げるな、逃げるな」の声が心に響いた・・・ 確かに親父の声だった! 「逃げるな」は生きて居た頃の親父の口癖だ! 俺が弱気になると、この言葉で諭された。 俺の何処かで、何かがふっ切れたような気がした・・・・・
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