きっと

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 結局、当初の期待通り、その飲み会では私にとって特別な事は起きなかった。暫く使っていなかったエネルギーを大量に消耗した。ランチ仲間の子は、目当ての人と二次会に消えた。他の人たちも各々に解散した。  大学生の頃は、まだ、もう少し飲み会も楽しめていたんだけどなぁ。  駅へ向かう道で溜息を吐いた。秋も終わってすっかり冷えた空気が、すっと胸に入り込んだ。 「あっ……」  思わず声が出てしまったのは、会社の二階の休憩所で彼を見かけた時だった。思ったよりも大きな声が出てしまい、彼にも気づかれた。自販機で飲み物を選ぼうとしていた手が止まり、きょとんとした目がこちらを向く。  「あぁ、こないだの……川田さんでしたっけ」  つい一週間前の飲み会でも、ほとんど会話をしなかった。私が一方的に彼の事を覚えているだけかと思っていたので驚いた。 「あれ、違いました? すみません、名前覚えるの苦手で」 「え、あ、違うんです! ……いえ、違わないです、合ってます。まさか覚えて頂けてるなんて思わなくて」  正直に答えたら、ハッハと軽快に笑われた。 「川田さん、ちょっと天然だよね」 「そんなことないです。お喋りがあんまり得意じゃなくて……」 「大丈夫、十分面白いから」  それは、はたして褒めているのか。それでも、嫌味な感じではない。それが彼の自然体なんだろう。 「ミヤマさん……でしたよね?」     
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