きっと

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「そうそう、三つの山で三山ね。……川田さん、どうして二階に? 事務室って一階だよね」 「あぁ、下の休憩室に苦手な上司がいて……」 「なるほど、避けて来たんだ」  まるで共犯の悪戯っ子のような笑みを浮かべているのが可笑しかった。 「そうなんです」  三山さんにつられて、声に笑みが滲んだ。私、ちょっと緊張してたんだな。ふっと肩の力が抜けた。  自販機で甘いカフェオレを買う三山さんの横で無糖のブラックコーヒーを買ったら、「おっ、大人だなぁ」とからかわれた。飲み会の時の自己紹介では、三山さんは私の三つ上だと言っていた。  少しだけ他愛もない話をして、お互い自分の部署に戻った。会話が上手な人だなと感じた。決して相手に嫌な思いをさせない。飲み会のような時には脇でニコニコ頷く役にもなれるし、私と二人で話す時には会話をリードしてくれる。とても居心地が良かった。  この日以来、時々二階の休憩所に赴くようになった。タイミングよく三山さんに会えたら、少しだけお喋りをする。朝、エレベーターで遭遇することも偶にあった。天気の話とか、今さっきあった出来事の話とか、本当にとりとめのない話をするだけ。その数分で、疲れや惰性で凝り固まった心がほぐれていくようだった。     
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