きっと

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 今日のデートは、そんな日々の延長線だ。最近新しく出来たレストランの話をしていたら、「今度、一緒に行こうよ」「いいですね」くらいの感じで、あっさりと決まってしまった。「デート」なんて言うのは大袈裟な感じもするけど、それ以外に適当な言葉が思い浮かばない。心の中で呟くと、ちょっと可笑しいような、こそばゆい感じがした。 「ごめん、ごめん。待った?」 「いえ、全然……私も、さっき着いたところで。今日は一段と寒いですね」 「そうだね。……体、冷えたよね。中入ろうか」  三山さんが一歩前を歩いて、お店の扉を開けてくれる。私が中に入るまで開けておいてくれる。一歩入ると、扉を押さえる三山さんの腕が耳の真横に来た。戸惑う私をよそに、三山さんは店員さんとやりとりをしている。頼もしいけど、ちょっと悔しい。  お店の中は十分暖かかったが、芯まで冷え切った体はなかなか温まらない。コートをハンガーにかける三山さんを見て、とりあえずコートを脱ぎ、首に巻き付けていた大判のストールを身体に纏わせる。  今日の目当ては、期間限定のかぼちゃのグラタンだ。飲み物は白ワイン。お互いに飲めるクチなのでボトルで頼んでみる。ミックスナッツとチーズの盛り合わせも頼む。「おじさんは野菜を食べなきゃ」なんてほざきながら、シーフードサラダも頼んだ。  白ワインで乾杯して、手早く届いたナッツとチーズをつまむ。 「最近、青カビの良さが分かるようになってきました」 「チーズはお酒飲めるようになってからの方が楽しめる気がするよね」     
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