6人が本棚に入れています
本棚に追加
あらゆる仕事を手早く、的確に、率先して片付けてしまうのだ。
滞りがちな家内の仕事がたちまちに整い出す。
その手腕から同期や先人はもとより、メイド長ですら一目置く存在にまで上り詰めたのだ。
ゆえに私の帰宅時に、真っ先に出迎えるのはアイーシャの役目となった。
「お帰りなさいませ、ご領主様」
「アイーシャ、何か変わったことはあるか?」
「お耳汚しするほどの事は何も。ところで、ご領主様にはお変わりがあったようで……」
「何もない」
「お召し物からメスの臭いが立ち込めております」
「気のせいだ」
「何発なさりましたか? 何発分の種を蒔かれましたか?」
「アイーシャ」
「はい、出すぎた真似をお許しくださいませ」
「うむ」
誰しも長所があれば短所もある。
アイーシャは部分的に口が悪く、特に女の気配にも不自然な程に敏感であった。
語気を強めたなら即座に引き下がるので、有能さの代償であると割りきり、特別咎めはしなかった。
だが、それがいけなかったのだ。
夕暮れになれば風呂である。
準備が出来たことをアイーシャから知らされると、私は脱衣所へと向かった。
アイーシャがタオルと召し替え物を捧げるように持ち、2歩分ほど遅れて着いてくる。
何事も無かったかのように、涼しげな顔で。
脱衣所に入る。
最初のコメントを投稿しよう!