有能すぎたメイド

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あらゆる仕事を手早く、的確に、率先して片付けてしまうのだ。 滞りがちな家内の仕事がたちまちに整い出す。 その手腕から同期や先人はもとより、メイド長ですら一目置く存在にまで上り詰めたのだ。 ゆえに私の帰宅時に、真っ先に出迎えるのはアイーシャの役目となった。 「お帰りなさいませ、ご領主様」 「アイーシャ、何か変わったことはあるか?」 「お耳汚しするほどの事は何も。ところで、ご領主様にはお変わりがあったようで……」 「何もない」 「お召し物からメスの臭いが立ち込めております」 「気のせいだ」 「何発なさりましたか? 何発分の種を蒔かれましたか?」 「アイーシャ」 「はい、出すぎた真似をお許しくださいませ」 「うむ」 誰しも長所があれば短所もある。 アイーシャは部分的に口が悪く、特に女の気配にも不自然な程に敏感であった。 語気を強めたなら即座に引き下がるので、有能さの代償であると割りきり、特別咎めはしなかった。 だが、それがいけなかったのだ。 夕暮れになれば風呂である。 準備が出来たことをアイーシャから知らされると、私は脱衣所へと向かった。 アイーシャがタオルと召し替え物を捧げるように持ち、2歩分ほど遅れて着いてくる。 何事も無かったかのように、涼しげな顔で。 脱衣所に入る。     
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