壊された病棟

用務員の証言『真実はここに』

ああ？　『あの病院』の事で、ワシの話を聞きたいって？
そりゃぁ、ワシは『あの病院』で30年近く用務員として世話になっておったからな。『あの病院』の事ならよぉ知っておる。

そもそもワシは『あの病院』の患者だったんだ。
それで、世話になった礼に会社を定年してから用務員として働きにきておったんだよ。

え？　『怪奇現象を体験したことは無かったか』って？
いんにゃ、ワシには経験が無いの。確かに『あの病院』は『出る』ちゅう事で有名ではあったが『そんな事』を経験した事は無かったなぁ。

ん？『そんな筈は無いだろう』って？
そう言われてもなぁ‥‥

ああ、『天井の滲み』か。505号室の話だな？
まぁ‥‥ええか、廃院になった事だしの。話をしてやっても。

いや、何の事ぁない。あの505号室ってのは、その真上が御手洗いになっておったんじゃて。
今でこそ御手洗いも洋式が増えたんで、床が『乾式』ちゅうてマットみたいな材質だけどな？　当時は『湿式』言うてタイル敷きが当たり前だったんじゃ。

ああ、そうじゃよ。和式のトイレだと便器を洗った時に床へ水が飛び散るからの。だから、タイル敷きの方が掃除に適しておったんだ。