愛を囁く

3/11
前へ
/132ページ
次へ
「ヴィー、予約は15時からだからそろそろ行こうか?」 なんで、適当にヴィーなんて名前にしてしまったんだろう。 こうやって、面と向かって言われるとすごく恥ずかしい。 実際に顔も真っ赤になっていたらしく、ミヤさんに心配されてしまった。 歩きながら、歌い手名が恥ずかしかったと言ったら、ミヤさんは 「俺のは、本名みたいなもんだからなあ。」 と言った。 どういうことか聞いてもいいかな?距離無しだと思われてしまうだろうか? 俺がオロオロしていると、ミヤさんはふっと笑って口を開いた。 「宮本圭吾っていうんだよ本名。」 「え!?俺に教えちゃっていいんですか?」 驚きのあまり変な声が出てしまった。 「うーん。別に悪用しないだろ?それにスタジオの申込書は勿論本名だし、どうせその時分かっちゃう事だから。」 事もなげにミヤさんは言った。 「あっ、そうか。えっと、俺は立野樹と言います。」 「へえ、じゃあ、樹って呼んでもいい?」 ミヤさんの重低音に囁かれ、俺はコクリと頷いた。 ********************** スタジオに入るとミヤさんは手際よく機材の準備をしていた。 俺も何か手伝える事と思い聞いてみたけど、大丈夫だよとミヤさんが一人ですべてやってしまった。 役立たずすぎて、少しへこんだ。     
/132ページ

最初のコメントを投稿しよう!

311人が本棚に入れています
本棚に追加