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「ヴィー、予約は15時からだからそろそろ行こうか?」
なんで、適当にヴィーなんて名前にしてしまったんだろう。
こうやって、面と向かって言われるとすごく恥ずかしい。
実際に顔も真っ赤になっていたらしく、ミヤさんに心配されてしまった。
歩きながら、歌い手名が恥ずかしかったと言ったら、ミヤさんは
「俺のは、本名みたいなもんだからなあ。」
と言った。
どういうことか聞いてもいいかな?距離無しだと思われてしまうだろうか?
俺がオロオロしていると、ミヤさんはふっと笑って口を開いた。
「宮本圭吾っていうんだよ本名。」
「え!?俺に教えちゃっていいんですか?」
驚きのあまり変な声が出てしまった。
「うーん。別に悪用しないだろ?それにスタジオの申込書は勿論本名だし、どうせその時分かっちゃう事だから。」
事もなげにミヤさんは言った。
「あっ、そうか。えっと、俺は立野樹と言います。」
「へえ、じゃあ、樹って呼んでもいい?」
ミヤさんの重低音に囁かれ、俺はコクリと頷いた。
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スタジオに入るとミヤさんは手際よく機材の準備をしていた。
俺も何か手伝える事と思い聞いてみたけど、大丈夫だよとミヤさんが一人ですべてやってしまった。
役立たずすぎて、少しへこんだ。
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