304人が本棚に入れています
本棚に追加
/132ページ
************************
マイクをセットして、ヘッドホンを付ける。
ミヤさんと向かい合うようにして立ってスタンバイした。
僕が立っている方が歌いやすいという事でわざわざ準備をしてくれた。
ミヤさんの優しさにもっと、もっと好きになっていく。
『別に好きになるのは自由だろ?』
さっきミヤさんの言っていた言葉が脳裏によみがえる。
そうだよな、俺がミヤさんを好きでいる事は自由だよな。
なら、実際には絶対言えない気持ちをこの歌にのせよう。
ヘッドホンからは前奏が流れる。
まずはミヤさんのパート、次に俺のパートとかけ合いをするように曲は続いていく。
貴方の事を想う気持ちがメロディーにのってあふれ出ていく。
サビの部分は二人同時に歌うのだが、タイミングを合わせるため視線が絡まる。
見詰め合ったそのまま、声を出す。
まるで、合わさった歌声から俺の気持ちが通じているのではないか、そう錯覚してしまったとき目の前のミヤさんが、俺の腕を引いた。
何事かと慌てる。
だって、腕を引かれてよろけた俺はミヤさんの胸板にすがりつく形になってしまったんだから。
最初のコメントを投稿しよう!