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事実、ミヤさんは俺から視線をはずし、気まずそうにした後、一言「悪い。」と言った。
ああ、やっぱり、悪いと思ってしまうようなことを俺はされたと言うことか。
ショックで他に何も考えられず呆然としていると
「本当に済まない。男にキスされるなんて気持ち悪かったよな。」
と言われた。
「へ?」
思わず間抜けな声を出してしまった。
「俺の事からかったんじゃないんですか?」
恐る恐る俺が聞くと、ミヤさんは驚愕したように目を見開いた。
「からかったんじゃないよ。樹があんまりにもかわいくて……。いや、違うな、俺が樹のことが好きでたまらないから理性が振り切れてしまった。怖がらせるつもりはなかったんだ。」
押し倒されたままの格好で言われたその言葉を聞いて、俺は、じわじわと全身が熱くなる。
「ミヤさんも、ゲイなんですか?」
「まあ、そういうことになるね。『も』って聞くって事は樹もこちら側なんだね。」
コクリとうなずいて、もう一度ミヤさんを見る。
甘いという形容詞がぴったりの表情で俺を見るミヤさん。
その表情は今までのものと全然違って、ああ、これは俺の気持ちに気が付いていると言うことが分かった。
でも、自分の気持ちを生まれて初めて口にするのは怖かった。
「お、俺も、ミヤさんのこと好きです。」
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