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だんだん、声が小さくなってしまったけど、至近距離にいたミヤさんにはきちんと聞こえたらしい。
「ほんと、たまんねーな。」
重低音で囁いた言葉に、僕は今でも恐らく赤い顔がもっと赤くなった事を自覚した。
恥ずかしくてたまらなくて、ミヤさんの胸元にすがりつく。
クスリと笑う音がした。
「なあ、もう一度キスしてもいいか?」
「あ、あの、初めてだったので俺あんまりキス上手くないと思いますけど、それでもいいなら。」
俺がミヤさんにすがりついたまま答えると、ミヤさんはあわてたように俺を引き剥がし、お互いに向き合って座った。
「本当にごめん。まさか初めてだとは思わなくて。改めて、キスしてもいいか。」
はいという返事の代わりに俺は静かにまぶたを閉じた。
すぐに、本当にやさしいキスと「好きだよ。」という世界で一番大好きな声が振ってきた。
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結局その日は録音どころではなく、後日改めて録ったその曲は今までで一番人気の曲となった。
ミヤさんは「二人の共同作業だから当然だろ?」と笑っていた。
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