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樹が歌うと言ってくれなくてはどうにもならない。
「じゃあ、とりあえずこっちでその歌い手?に連絡取ってみるから。宮本はとにかく曲を作れ。」
「で、いいですよね社長。」と橋本さんは社長の方を見た。
社長は長く息を吐いた後口を開いた。
「宮本、思った通りにやってみろ。責任は俺が取るから。」
そう言われ、正直こみあげるものがあった。
俺はジャケットの内ポケットに入れておいた辞表を社長に預けた。
◆
橋本さんには連絡を取るのを少し待ってくれとお願いして、階段の踊り場で樹に電話をかけた。
勿論、アニメ主題歌の件でだがマナーモードにしておいたスマホを見ると会議中に一件、樹から着信があったのだ。
すぐに電話はつながった。
「ごめんなさい。俺昨日電話に出られなくて。」
開口一番樹は言った。
昨日電話に出られなかったのは考査明けの飲み会に(恐らく無理矢理)参加させられて午前様だったからのようだった。
俺にやつあたりされてしばらく距離を置いていたっていうのに何で樹が謝るんだよ。
「ごめん。」
電話口で俺が言うと、ヒュっと息をのむ音が聞こえた。
「嫌です!!……俺、ミヤさ、圭吾さんと別れたくない。」
何を勘違いしたのか樹がすがるように言う。
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