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隣の席の三人が席を立つと向かいに座る友人と頷きあって彼の後を追った。
学食をでてすぐにヴィー(仮)は履修科目が違うのか他の二人と別れた。
友人とコソコソと後を付ける。
人気の無い中庭にあるベンチに腰を下ろしたその人を少し離れた所から友人と見つめた。すると、とてもリラックスした様子で、何かを口ずさむ。
所謂鼻歌というかな?
軽やかなメロディが彼の口から紡がれる。
聞いた事の無い旋律だが、その声は正にV(ヴィー)の歌声そのもので、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。
彼は、私と友人がすぐ近くに居る事に気がつく事も無く、そのまま歌い続けた。
その声を聞いて、顔面が普通で冴えない感じだとかそういう物が全てどうでも良くなった。
友人も私の隣で真っ赤になっていた。
その歌を邪魔してはいけない。そんな使命感に駆られて私も友人も結局声をかける事が出来なかった。
◆
その日、午後の講義に出た後友人と帰ろうと大学の敷地を出ようとしていると、目の前にヴィーが居た。
彼も今帰るところの様で、少し小走り気味に校門に走り寄って行った。
そこには、一人の男性が待っているようだった。
年齢は私たちより少し上のようだが、ブランド品だろうか、サマーニットが良く似合っている。
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