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--樹--
◆
俺は歌が下手だ。
ニヤニヤ動画に投稿して沢山の人に見てもらえて、評価してもらえて俺の歌が好きだって言ってくれる人がいて、アニメの主題歌にも抜擢された。
でも、俺の歌はヘタクソだ。
俺の歌が良く聞こえる事のほとんどが、ミヤさんが俺の粗を隠す事が出来る楽曲を提供してくれているからだ。
メロウなバラードの歌い手として俺の名前が時々ネット上で上がることがあるけど、それ以外が聞くに堪えないレベルだっていう事をちゃんと理解している。
そんな俺が、今フリーとして仕事を始めたばかりの圭吾さんの足を引っ張る事はしたくはない。
俺が、もっと、もっと実力のあるシンガーであればネットでデキテいるなんて書かれても気にしなくてすんだのだ。
実際、芸能人でホモっぽいーなんていう書き込みはネット上のどこかで毎日されている程度の話しだ。
だから、圭吾さんから真剣な目でされたライブ中は別行動という提案を、俺は飲むしかないのだ。
「その代り、ミヤヴィのユニットの奴は予定通り必ず一緒に歌ってくださいね!」
俺が言うと、圭吾さんは目尻を若干下げながら
「分かってるよ。んー、少しライブ用にアレンジしようかな。」
と答えた。
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