君と愛を唄おう

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名前も知らない女の子と二人連れだってカラオケボックスに入る。 夕方の時間帯という事で1時間で予約をしようと店員に声をかけようとしたが、その子が「フリータイムで。」ときっぱりと言った。 慌てて彼女の方を見ると「支払いは私がします。」と言った。 薄暗い室内で向かいあう様に座る。 ゴクンと唾を飲み込む音が聞こえた。 「私、国際コミュニティ学部1年の月形早苗といいます。 ……あの、ニヤニヤ動画のヴィーさんですよね。」 失敗したと思った。 月形と名乗ったその子とドアを確認して立ち上がった。 「ち、違うんです!! 今日は謝りたくて!!」 叫ぶ様に月形さんは言った。 仲良くなって欲しいでも、誰かを紹介して欲しいでも、協力して欲しいでもない。 多分何か面倒なお願いに巻き込まれると思い警戒をしていたのだが拍子抜けした。 「話だけでも聞いてください。」 月形さんは立ちあがると、深々と頭を下げた。 「ちょっ!?えっ?あの、どういう事でしょうか?」 慌てて頭を上げてもらいながら彼女に問う。 「SNSの最初の書き込み私の友人なんです。」 もう一度、深く深く月形さんは頭をさげた。 彼女の手は恐ろしい位真っ白でブルブルと震えていた。 「書き込みって……。」     
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