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そっと耳元で密やかに言われたその言葉は俺を思いやっての事で、思わず目を見開いた。
「歌う事は好きですけど、歌手になりたいとかそういう事はまだ良く分かりません。
大学も楽しいですし。
俺は圭吾さんと付き合ってる事を嫌な事だと思った事はありません。
まだ、周りにゲイだってカミングアウトする勇気が無いのは事実ですけど、周りと圭吾さんだったら比べるまでもなく圭吾さんを取りますよ。」
俺も、年上の恋人の負担にならない様にとばかり考えていて何も伝えてこなかった。
圭吾さんが先回りして、色々と考えてくれている事は知っていたし、それが心地良かったので甘えきっていたのもある。
圭吾さんの負担になりたく無いと理由を付けつつもおんぶに抱っこの現実に申し訳無さがつのった。
「本当は、ライブ一緒に行きたいし、練習とかも一緒にしたいです。」
手を繋ぎたいとか、恋人として紹介して欲しいとかそんな事は考えて無い。
ただ、全く興味も何もない赤の他人のフリをする圭吾さんを見たくないだけで。
わがままかな?そうだよな。
俺と違って、音楽で食べてる人だもんな。
「すっ済みません!!今の――」
無しでという言葉は寄せられた圭吾さんの唇に飲み込まれてしまった。
俺の声を飲み込む様なキスに直ぐに翻弄されてしまう。
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