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愛をうたう
好きな人の家に初めて行くという事は誰にとっても特別な事だと思う。
例え相手にその気が全く無かったとしても……。
特に俺のように相手が同性の場合、恐らくというかかなりの確率で相手は何の気無しに家に招待しているのであろう。
「わざわざ遠くまで来てもらっちゃって逆に大変だっただろ?」
自宅最寄り駅まで迎えに来てくれたミヤさんが申し訳なさそうに言った。
「全然!!それにしても防音設備付きの賃貸って珍しいですね。」
「ああ、条件にあう物件が中々無くて、結局通勤一時間半コースだよ。」
苦笑いするその表情もかっこ良くてついつい見入ってしまった。
「ここなんだけど」と案内された建物はむきだしのコンクリートに小さめの窓が見えて、まるで秘密基地のような外観だった。
大家さんの趣味らしいが、男なら一度はあこがれる佇まいのその住まいに思わず歓声を上げた。
「散らかってるけどどうぞ。」
ミヤさんに続いて部屋に入る。
ああ、ミヤさんの香りだ。
家というのには多かれ少なかれそのうちの匂いというものがあると思うけど、ここはなんていうかミヤさんからいつも香っているシトラスで充満していた。
「こっちなんだけど、お茶でも入れてくるから少し待ってて。」
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